しまむら高彦の公明党意見開陳
H19.3.13 平成19年予算委員会
公明党豊島区議団 島村高彦
私は、公明党豊島区議団を代表いたしまして、平成19年度一般会計予算並びに国民健康保険事業会計、老人保健医療会計、介護保険事業会計、従前居住者対策会計の4特別会計予算を認定することに賛成する立場から意見開陳を行います。
平成19年度予算は、厳しい財政状況を克服しつつある中で編成され、一般会計予算は特別な財源対策を講じることなく、対前年度比3.9%のプラス、特別会計を含めますと4.3%のプラスであり、156件の新規拡充事業を盛り込んだ、実に9年ぶりの積極予算となりました。また、負の遺産を克服するための改革から未来を切り拓く改革へと軸足を移し、戦略的な都市経営の展開と新たな行政経営システムの構築を見据え、4つの目標を掲げスタートを切ることができたのであります。さらに、本予算には我が党の要望も組み入れてくださり、深く感謝を申し上げる次第であります。ここに至るまでの道のりは誠に長く険しいものであり、高野区長を初めとする行政執行部と職員の皆様のこれまでのご労苦に敬意を表するものです。
さて、我が党は本予算を審議するに当たり、次の観点から取り組ませていただきました。
第1に、幅広い区民の視点から予算編成がなされているか、第2に、将来を見据えた事業計画に取り組んでいるか、第3に、持続可能な財政構造を構築する努力がなされているか、以上の3点であります。区財政は確かにかつての危機的な状況を脱し、健全化に向かってはおりますが、減少傾向にあるとはいえ、現状のままでは将来の世代に負担を先送りすることになる巨額の債務を抱え、また、高齢化と経済の低成長社会がもたらす生活保護の増加や医療、介護の給付に伴う繰出金はますます増額していくことは間違いありません。加えて、老朽化した公共施設に対し多額の維持管理経費を必要とするなど、多くの課題を抱えているのであります。すなわち、財政健全化への道のりは道半ばであり、絶えざる行財政改革に取り組みながら、的確に区民需要に応えるという困難に挑戦していかねばならず、同時に、区民にもその理解を求めていくべきであると実感をするものです。
以下、款別に要望も交え意見を申し述べます。
まず、総務費においては、未来に向けての取組みと区民の信頼性を向上させる施策に重点を置いていることは認識できますが、区民への情報提供に関しては全庁的なルールをもっと明確にし、さらなる透明性の向上に努めるべきであると考えます。また、世代間負担比率が最も高い状況にあることから、負の遺産も含めすべての資産の推移を明確に区民に示すため、会計制度や財務システムの充実は急務の課題であります。真の参加と協働を推進するためには、区側の体制をさらに充実させていく必要があります。その意味で、目的を明らかにしたコンプライアンスの確立、そして豊島協働プロジェクト事業など、より早く、より正確にその意図するところを区民に発信していくことが望まれます。さらに、区の組織体制をグループ制に改正していくことは区民の多種多様な要望に対応できる職員を育成するために効果的な制度であると思います。問題は職員一人一人の能力アップに加え、どのように相互の連携を強化していくための仕組みを整備していくかにかかっておりますが、今後の取組みに期待をいたします。
次に、福祉、衛生費でありますが、少子高齢社会の進展により、ますます限られたものとなっていく財源を効果的に活用する手法が求められてまいります。国の社会保障制度の見直しによる影響も、実際に生活をする区民の現場に視点を置き続けなければ正確に掌握することはできないのであります。この度、我が党の要望により実施していただくことになった「おとしよりホッと相談」と「高齢者困りごと援助サービス」の両事業も従前のサービスでは対応し切れていない需要に応じていくものであります。高齢者に安心を与える施策として、必要とする区民に十分周知徹底をするようにお願いをいたします。また、この両事業も含め、今回盛り込んだ多くの新規拡充事業についても、常に現場の状況を検証しながら推進していただくよう要望いたします。
なお、子どもの権利の保障については何度も申し上げているように、既に議決された計画どおり、行政として責任を持って実行すべきであると考えます。日本国憲法は、第11条並びに第13条において子どもも含むすべての国民にこの権利を保障し、同時に第12条において権利の乱用を禁止しているのであります。これは人間として、国民としての基本であります。子どもの権利を保障するということは、大人が子どもを信頼するということにつながるのです。子どもを指導し、教え、諭していくために土台となるものです。自分を認めない、あるいは信頼しない大人の言うことに子どもが耳を傾けるはずもないと考えるべきです。
次に、文化商工費においては、元来、廃業率が高い本区の産業構造をさらに十分調査をし、企業創業に取りかかりやすい環境整備に努めていただきたいと思います。そのためにも、手軽に利用できる創業のインキュベーション施設の設置は有効であると考えます。商店街振興施策も数多く取りそろえてはおりますが、実際に、商店街が有効に活用できるように、事業の内容や特性を十分に説明し、理解をしてもらえるように取り組んでいただくよう要望いたします。
また、雇用促進事業は、区内の眠っている能力を呼び覚ますことにもつながります。高齢者、若年者、そして障害者も含めた幅広い雇用促進、就労支援が先の企業、商店街支援策と併せ区内の活性化に大きな原動力となっていくことを期待します。
さらに、舞台芸術交流センターも、ランニングコストをはるかに上回る文化芸術の創造活動が展開され、副都心豊島の新たな起爆剤となるよう取り組まれることに期待をいたします。
次に、清掃環境対策では、人口の密度が高まりつつある本区においてさらに重要性を増す事業となってきます。重大な問題としてのしかかる地球温暖化や抑制し切れないごみの排出など、区民とともに取り組まねばならない課題が多く、より多くの区民の理解、参加、協働が真に必要となってくると考えます。本来、自分が住む地域の環境に無関心、無理解でいる人が少数でもいること自体大きな問題として取り上げていくような社会を築いていかねばならないと思うものです。人が1人生きるということが、環境に対し負荷を与えていることを認識させていくべきです。その意味でも、区の情報発信あるいは環境啓発事業によって大きな気づきを与えるように取り組んでいただくよう要望いたします。なお、モデル実施を行う廃プラスチックサーマルリサイクルについては十分な検証を行い、測定結果や環境に与える影響も全体として明確にして、区民に安全性と必要性を理解していただく取組みをお願いいたします。
都市整備、土木費では、副都心再生という観点からにぎわいや安全性、快適性、そして魅力創出に重点を置いた事業として評価できるものになっております。確かに、都市間競争において副都心の街並み景観の向上や駅周辺の整備は必要不可欠であり、災害に強い都市空間の形成も区民や来外者の安全、安心に欠かせないものです。また、各地区で実施する居住環境総合整備事業によって良質な住環境の再生と防災性の高い町の整備が促進されていくでしょう。
しかし、一方でこうした施策により、結果として低所得者、特に高齢者の居住環境が失われていくことにつながっていくのではないかと危惧するものです。安心住まい提供や入居支援事業等の取組みにおいても、対象となる高齢者の生活実態をよくよく把握した上で対応していただくよう強く要望いたします。また、今後高齢者が増加する状況において、福祉政策としての公営住宅のあり方も含め、低所得者の住宅政策のあり方を明確にしていただくことも要望いたします。
次に、教育でありますが、未来を担う児童・生徒の育成に必要とされる学びの場を数多く提供していくべきであると考えるものです。頭から学力向上を唱えるのではなく、自主的に学び、考える場の提供であります。教員の自己研鑚や指導力向上も当然でありますが、教員だけに任せるのでなく、地域の様々な人材を活用する仕組みをさらに大きく築き上げることが必要であると考えます。本委員会で質問した「放課後こども教室」も単に児童を預かるというだけではなく、広い意味での学びを体験、習得させる場として生かせないかというお尋ねであります。また、問題とされている家庭の教育力を再生する試みも強化していくことが急務の課題であると思います。現在行われている家庭教育推進の事業にも、地域の人材をどんどん投入していくことは効果的であると感じます。子どもにとっても親にとっても、驚きと刺激が新たな気づきと学びのきっかけになることもあるのではないでしょうか。
次に、いよいよ全校で実施となる特別支援教育の推進に関しては、当初から指導員の不足が懸念をされておりますが、保護者の意識啓発も含め、コーディネーターや専門家チームとの連携強化を図り、指導体制の早期構築を望みます。併せて、外国人児童・生徒への支援も充実させるよう要望いたします。
いじめの問題も同様ですが、一見小さな不安が大きな問題へと至らぬよう、子どもの声に敏感に反応できる教育体制を築いていただくことを願うものです。
次に、公債費ですが、平成18年度末で、債務負担分も含めた634億円を超える巨額な債務が財政硬直化の要因の1つとなっていることから、可能な限り早くこの残高を減少させていく必要があります。平成19年度1年間の区債の利息支払いだけで9億4,000万円もあることから、言うまでもなく、今後の起債に関しては十分に留意され、計画的に発行すべきであると考えます。また、金利上昇を目前にして土地開発公社の債務償還は、現状平成33年まで続きます。財政状況を踏まえながら一括返済も視野に入れ、粘り強い金利引き下げ交渉を行うよう要望いたします。
最後に、特別会計のうち介護保険事業会計においては給付金が増大し、保険料も負担感が増しているような状況において、不正に給付金をかすめ取るような事業者は徹底して排除せねばなりません。区当局の監視体制の強化を望みます。また、高齢になっても元気に過ごせる人生を全うしていただくため、介護予防事業は効果的な実践を期待します。今だ介護予防の重要性を認識できないでいる多くの高齢者に対し、工夫を凝らした意識啓発を行い、身近に取り組めるよう地域の協力も仰ぎながら実施するよう要望いたします。
以上、款別に意見を申し上げましたが、こうしてすべての事業を見渡しても、従来の縦割り行政では、もはや区民の需要に応えることは難しくなってきていると感ずるものです。時代の変わり目にあって、区民の需要もますます変化をしてくると考えられます。それに伴い、区の行政執行もその変化に対応していかねばならず、それは私ども議員も同じであります。これからは区民の視線もより厳しいものとなるだけに、職員の皆様も私ども議員も公職にある使命をより強く自覚せねばならないと感ずるものです。その自覚こそ豊島区発展の原動力になると確信をするものです。
最後となりましたが、急な資料請求にもかかわらず迅速に対応してくださったり、雑然として表現力に乏しい質問にもその意を酌んで丁寧に回答してくださった理事者の皆様に深く感謝を申し上げます。
さらに、今年度で引退をなされる理事者の方々、長い間のご公務、誠にお疲れさまでございました。引き続き、豊島区政に対するお力添えをお願い申し上げる次第です。そして、我が党においても、公明党豊島区議団の両雄として長い間絶大な力を発揮した小倉、池内両議員が勇退をされます。残された私どもといたしましては、再び区民の付託を受けることができるならば、常に生活者の現場に身を置きながら未来を見据え、区政に対し提言し続けることをお誓い申し上げ、意見開陳を終わります。ご清聴ありがとうございました。