平成21年 決算、文化商工・教育費
2009年10月 15日
地域の人材を活用した生きた教育の推進
島村高彦委員
続きまして、学校教育における地域外部人材の活用についてお伺いをいたします。午前中にも家庭の教育力の向上というお話で堀委員からございました。子どもたちにとって、やはり一番大きいのは親の教育ですね。続いて学校の先生ということで、一番大きな影響を与えるわけでございます。だけれども今、いろいろと社会的な問題にもなっておりますように、なかなか親御さんと学校の先生だけで十分な状態になっているのかどうかは非常に懸念されているところでございます。保護を受けている義務教育の最中はまだいいかと思うのですね。問題は、やはりこの子たちが将来、義務教育が終わって社会に出たときの問題として考えなければいけないので、非常に考えても見返りも教育委員会にとってあまりないのですけれども、しかし一番大切なのは、やはりそこの部分で教育ということを考えていかなければ将来の地域社会だとか日本全体のことを考えたときに非常に大きな問題になってくるのではないかと常々考えております。
豊島区の今回の決算の中にも、見ましたら3つ程そういうのが見つかったわけでございます。将来の子どもたちにとって、どこまで効果があるのかという観点で、その事業についてお聞きをしていきたいと思います。
まず301ページに豊島スクールスタッフ事業ということで、これも地域の人材を生かして行う事業だと思うのですけれども、これについて概略的にご説明いただければと思います。
朝日教育指導課長
スクールスタッフ事業と申しますのは、様々な経験、技能、資格、特技を有する地域の方々を学校や幼稚園の講師に招いて、子どもの学習に生かすという趣旨で行ってございます。前回の学習指導要領で総合的な学習の時間が導入されまして、地域のそうした方々の教育力を学校に導入しようということでございます。本区におきましては、教育委員会に名簿登録をしていただきまして、校長先生のご推薦も含めて学校が必要となるという方に対して、謝金を教育委員会で補充をしているということでございます。
島村高彦委員
成果というか効果ですね、あるいは子どもたちの反応や感想とか、そういった部分をお願いしたいのですけれども。
朝日教育指導課長
やはり本物の方に触れ合うということで、例えば藍染のことを学ばせていただくだとか、落語から人に対する話し方、間の置き方、琴や三味線など様々な伝統文化について、その道の専門家と触れ合うということで、子どもたちが非常に社会に対する目が開かれると。学習指導要領がねらう生きる力につながることで、学校にとっては大変有意義な制度ではないかと考えてございます。
島村高彦委員
文化とか伝統とか本当に大切なものだと感じます。同時に、子どもたちが今後成長していくにつれて必要なものという観点では、まだまだ他にもいろいろあると感じるのですけれども、今後取り上げていく内容を、文化、伝統といった意味では非常に大きな効果があるかと思うのですけれども、それ以外にどういったものについて子どもたちに体験をさせていきたいと考えていらっしゃいますか。
朝日教育指導課長
やはり生きる力を育むという点では、キャリア教育の観点で、人が何のために働き、何のために生きていくかというところで様々な職業をお持ちの方を講師に招いて、キャリア教育の一環でそうしたことに接する。その延長線上に、この事業とは違いますけれども中学生の職場体験などで、実際の地域で働いている方の中で職場体験活動を通して、そうした方々から学ばせていただくといったことは今後さらに充実させていきたいと考えてございます。
島村高彦委員
ぜひそうした取り組みを深めていっていただきたいと思います。どうしても親と学校の先生だけということになりますと、ある程度限られた影響になってしまうとも感じます。できるだけ多くの人に触れさせ、できるだけ多くの刺激を与えること自体がやはり将来的には大きなものにつながっていくと思います。
続いて、同じような感じの事業かと思うのですけれども、地域人材等活用推進事業というのが303ページにあるのですけれども、これは執行率がゼロ%ということで、何でゼロ%なのですか。
山根教育総務課長
この事業でございますけれども、先程、教育指導課長がご説明しましたような総合的な学習の時間の指導者だけではなくて、学校には部活動とかそれから図書館のお手伝いとか、登下校の安全確保とか、施設設備の維持管理とか、いろんな人材が必要になってきます。そういういろんな人材を総合的にシステマチックに教育できないかというシステムを確立しようという試みだったところでございます。
それで、18年、19年に一応研究しまして、20年度から施行に移る予定でございましたけれども、国の学校地域支援本部の構想も出てきましたので、それとの整合性を図るということで、1年検討をしてきたところでございます。最終的に、やはり地域にそういうシステムをつくろうと思うと、地域にコーディネーターをお願いして、コーディネーターに地域人材の供給をお願いするような形に持っていくのですけれども、それが現実的にはなかなか難しいかというところで、1年間施行を見送ったところでございます。もう1回検討をし直そうというところでございます。
今、教育ビジョンを検討してございますけれども、その中で新しい教育ビジョンの中の課題として位置付けていこうと考えているところでございます。
島村高彦委員
コーディネーターというのは要するに、呼んでくる地域の人とそれから学校側の間を取り持つ役割を果たすと思うのですけれども、どんな方がコーディネーターとして選ばれるのでしょうか。
山根教育総務課長
職業とかそういうことはまだ考えておりませんけれども、今ご指摘がありましたように、ですから地域に顔がきくという方で、顔が広くていろんな人材をご存じの方で、地域の人材と学校とを結びつけるような方を想定しているところですけれども、これを23の小学校、8つの中学校に1人ずつ見つけてやることもなかなか難しい話で、これをシステム化するのは難しいというところでございます。
島村高彦委員
これなどはあれですか、もともと国の施策か何かでこういったものが来るようになったのですか。
山根教育総務課長
これは豊島区独自に18年、19年と検討してきて、そういうスタッフが必要だという問題意識から検討してきたところでございますけれども、国でも学校支援地域本部という形でそういう事業をスタートさせてございます。それから、東京都も学校の人材の新規事業ということで、これから21、22年度ぐらいからスタートさせるようなことになってございますので、そういう事業の内容を見ながら、どこら辺で整合できるか、それを使えるのかどうか、独自にやらなければいけないのか、その辺を検討していきたいと考えているところでございます。
島村高彦委員
今、地域の人ということなのですけれども、外部の人材ということで、いろんな体験あるいは教養をお持ちの方というのはたくさんいらっしゃると思うのですけれども、地域ということにこだわらず、もっと広いところから人を呼んで、生徒に触れさせるということも非常に私は必要かと思うのですけれども、そういった観点はお持ちなのでしょうか。
三田教育長
今ご指摘の件ですが、人材をどのように活用していくのかということは、1つは指導要領等に定められている教育課程が、これまで単一の系統性を持った教科というものに特化されていた傾向がございますけれども、総合的な学習が10年前に導入されて以来、もっとクロスカリキュラムということで総合化してきたということが1つ背景にございます。それから、もう1つは、先程指導課長が申し上げたようなフリーターとかニートとかという若者の職業観がなかなか確立しないことが、生きる力に阻害要因をなしているということの解決を図っていく必要があるということで、これまで進めてきた学校中心の教師と子どもとの関係での教育というものから、もっと幅広く様々な能力をお持ちの方と一緒にやっていくということが背景にございます。
そういうことで現在、豊島区では先程説明がございましたキャリア教育の一環として、地域の地元の法人会やあるいは地域商店街、ロータリークラブや商工会議所等の方々の様々なご協力をいただいて、子どもたちが職場体験を通して本当に生き方が変わった、学校に戻ってきたら随分大きくなったなということを評価いただくような成果も上がっておりますので、一層これらを充実して、外部の人材を活用した教育を進めてまいりたいと考えております。
島村高彦委員
3つ目に聞こうとしたのが今、教育長が言ったキャリア教育の推進ということなのですね。これも非常に当初からすごくいい取り組みだということで、やはり受け入れる方も地元の児童ということで大変にやりがいを持って、大変だけれどもやっているのではないかと思っておりました。
ところが、20年度は執行率が31%ということで、やはりこの辺もなかなか難しい点があって、こういう状況になっておるのでしょうか。
朝日教育指導課長
19年度から20年にかけて執行率が若干下がっておりますのは、職場体験にかかる生徒の交通費を保障しようということでございました。若干豊島区内だけでは協力の事業所がないものですから、近隣の区などまで出ていくためのものなのですけれども、残念ながら20年度は8校全部が5日間の体験ができませんで、まだ3日間とか4日間の学校もありました。そういう関係で執行率が低いと。今年は全校が5日間、完全に実施をしてございますので、執行率は高まるということでございます。
島村高彦委員
本当に受け入れる方も仕事をしながら子どもが来るというのは大変なことだと。ただ、それでもやはり子どもたちのことを考えたときに、それを受け入れてやっていこうと考える方もたくさんいらっしゃるのではないかということで、ぜひ学校側、教育委員会等が、できるだけ支援をして差し上げていただきたいと思います。
最後に結論を言いますけれども、学校の先生以外の人が持っているいろんな知識や経験をやはり子どもたちに対して直接教えていく機会をつくることが、これからいろいろと本当に求められてくると思うので、正式な教科もある中で非常に大変なのですけれども、ぜひ力を入れてお願いをしたいと思います。以上です。