島村高彦意見開陳
H20.3.17 平成20年予算委員会
公明党豊島区議団 島村高彦
私は、公明党豊島区議団を代表いたしまして、平成20年度一般会計予算並びに国民健康保健事業会計を初めとする5特別会計予算を認定することに賛成をする立場から意見開陳を行います。
平成20年度予算は、ようやく厳しい財政状況を克服し、いよいよ安定的な財政運営が開始できるという状況の中で編成をされました。
一般会計予算は、新中央図書館の建設終了に伴い投資的経費が減少した分、扶助費などの事業費が増加をし、前年度対比0.1%のプラス予算となりました。また、3年連続して特別な財源対策を講ずることなく、新規拡充事業も、前年の156件を上回る 182件を盛り込んだ2年連続の積極予算となりました。さらに、次世代に豊かな豊島区を引き継いでいくことを目的として、文化、健康、都市再生、そして環境という4つの政策を柱とする未来戦略推進プランを掲げ、前進することとなったのであります。
振り返りますと、平成7年の区臨時行財政調査会の立ち上げから始まった財政の立て直し作業は、効果も乏しく、高野区政のスタート、平成11年には財政債権団体転落への危機にまで追い込まれてしまったのであります。そして、その翌年から開始をされた豊島区財政健全化計画、そして、その後の二度に渡る厳しい行財政改革プランを経ながら、歳入環境の好転もあり、ようやく長く険しいトンネルを抜け出すことができました。
ここまで財政を立て直した高野区長や行政執行部のご労苦に対しまして、深き敬意と感謝を表するものであります。
さて、我が会派は本予算を審議するに当たり、次の観点から取り組ませて頂きました。
第1に、多様な区民に対し公平な観点から予算編成がなされているか。第2に、参加と協働を促進するために透明性の高い行政経営に取り組んでいるか。第3に、将来の区民生活を見据えた事業計画となっているか。第4に、歳入状況も的確に予測し、安定した財政運営を維持、構築する努力がなされているか。以上の4点であります。
区当局も十分に認識されておりますように、今なお重い負債を初め、高齢化と経済の低成長による生活保護費の増加や、医療介護の給付増に伴う義務的経費への繰出金の増加、老朽化した公共施設の維持、改修、改築等の出費。あるいは税制改正による法人二税の問題等、先行き不透明な歳入環境など、多くの不安要素を抱えているのであります。そのような中で、耐えざる行財政改革に取り組みながら、的確に区民需要に応えていかねばなりません。
したがって、今後さらに区民に対し、本区の行政経営の目標と内容について、深い理解を求めていく努力と工夫を重ねていくべきであると実感をするものです。
以下、款別に要望を中心として意見を申し述べます。
まず、総務費においては、安定した行財政を推進する努力と、新たな行政事業に積極的に対応しようという姿勢は高く評価できますが、区民への情報提供に関しては、今後、全庁的かつ重点的な研究、努力が必要であると考えます。ホームページのリニューアルについても、利用者が求める情報に速やかに到達できるユーザビリティを構築されるよう望みます。また、広報誌についても難しいことではありますが、一度に全てを伝えようとせず、的を絞り必要なことを必要なだけ掲載をし、より簡略、的確に表現するために、文字数や専門用語も、可能な限り限定をして作成をするべきであると考えます。さらに、情報伝達に求められるのは相手の興味と関心のある部分に訴えることであり、その部分を入り口として、伝えたい情報も発信できる方法について研究をされるよう要望いたします。
少子高齢社会における自治体にとって、参加と協働もますます求められる取組みとなります。徐々に運営協議会も立ち上がりつつある区民ひろばですが、さらに早く、自主運営、自主管理が実現できるよう総力をあげて支援されるよう求めます。
また、最大の防災対策は来街者も含めた地域住民の連携強化であります。各種防災訓練も、少しでも多くの住民の参加と協働を推進できる取組みを検討されるよう望みます。
限られた時間の中で、全てを言い尽くすことはできませんでしたが、さらなる透明性の向上を図るため会計制度改革は急ぐべきであると考えます。
ご承知のように、改善されている各種財政指標も、いまだ23区平均以下であり、世代間負担比率も最下位を脱したとはいえ、いまだ低い状況にあることから次世代への負の遺産を明確に示していく必要もあります。
財務会計システムの改革も21年度以降の取組みとなっているようですが、執行系システムが導入されていないのは23区では豊島区だけであり、そのため、その部分だけを見れば、他区より余計な人件費と業務時間を要しているのであります。主管課の直接入力による職員のコスト意識の向上と、財政状況をより明確に区民に示すために、早めの会計制度改革について要望いたすものです。
また、管理型から目的思考の経営型組織への転換を図るため、グループ制の導入については職員の能力ややる気が十分に生かされる体制を整備されるよう求めます。その他、職種間異動の推進や、昇給制度の見直しについても、その目的について職員の十分な理解と納得を得た上で推進をされるようお願い申し上げます。
次に、福祉、衛生費でありますが、少子高齢社会の進展により、ますます重点的な施策の展開が求められ、限られた財源を効果的に活用していかねばなりません。
まず、「高齢者困りごと援助サービス」と「おとしよりホッと相談」についてですが、いずれも電話で受けるサービスであり顔が見えないことから、高齢者については、より誠実な対応を行うようお願いをするところです。加えて高齢者困りごと援助サービスについては、介護保険サービスの補完的意味合いもあることから、区民への周知を徹底するよう要望いたします。また、要介護者の約半数が認知症患者であることから、この方々の生活を守るため、成年後見制度について効果的・積極的な運用を要望いたします。
今もって高齢者における悪質訪問販売や振込み詐欺等の被害が多い現状に対処する必要があると考えます。
また、増えつづける発達障害児を前にして、必ずしも十分な対応がなされていない現状がございます。よって、幼児期から学齢期、そして就労支援や社会参加まで一環した支援ができるよう部局を超えた横断的体制づくりに取り組んでいただくよう要望いたします。そうした意味において、東京都の発達障害支援体制整備事業も積極的に活用されるよう望みます。
少子化の中、育児支援も行政に課せられた大きな役割となってきております。本区で行う様々な育児支援策も、決して単発で終わるのではなく、最終的には地域全体が子どもと親の育成に携われるような環境づくりを推進されるよう切に要望いたします。「子育て王国・としま」の出現をご期待を申し上げます。
次に、文化商工費のうち、文化費においては、「文化では飯が食えない」という批判があるものの、我が党は文化、芸術の振興には基本法の制定の推進を初め全力を注いでまいりました。
次元は異なりますが、かつて20世紀前半の世界大恐慌を脱却するため、アメリカのルーズベルト大統領が行った政策は大規模な土木事業の一方で、大掛かりな文化政策の展開でありました。これによりハリウッドに代表されるような今日のアメリカ文化の基礎がつくられたと言われております。まさに文化が人と街を元気にし、新たな価値を創造していくエネルギーとなることは歴史が証明をしているのであります。
高野区長が進める文化政策が大きく花開くことをご期待申し上げるものですが、同時に区内には、まだまだ多くの文化団体があります。こうした人たちが本区の文化行政に、もっと簡単に携われるような仕組みを整備されるよう要望いたします。
次に、商工費については、区内産業の底上げのため、引き続き起業・創業に取りかかりやすい環境整備に努めていただきたいと思います。そのためにも手軽に利用できる創業のインキュベーション施設の設置に関し、利用者同士の相互連携や取引先確保につながる情報発信も可能となるような、具体的な方策決定に、早めに取り組むよう望みます。
また、区民生活の安定と地域の活性化のため就労支援事業については、今後、相談窓口の設置にも取り組んでいただくようお願いをするところです。
さらに、福祉の款で行った東京都の低所得者生活安定化プログラムについては、正規雇用の確保が困難な若年層、ひとり親家庭、中高年層、ネットカフェ難民等の安定した生活の確率に向けて大きな取組みとなることから、雇用促進事業を行う文化商工部としても十分な連携を図っていくよう要望をいたします。
次に、清掃環境対策では、人口の密度が高まりつつある本区において、ますます重要性を増す事業となってきます。重大な問題としてのしかかる地球温暖化や、抑制しきれないごみの排出など、区民とともに取り組まねばならない課題が多く、より多くの区民の理解と参加、協働が必要となってくると考えます。新たなリサイクルシステムの構築を目指し開始をする生ごみ発電モデル事業も、循環資源活用型社会の形成につながる取組みとなるよう望むとともに、本区が取り組んでいる環境に関する情報発信、あるいは啓発事業の効果をご期待申し上げます。
都市整備、土木費では、豊島の顔である池袋副都心を、環境との調和を柱として再生をする新ルネサンス構想を具体化していくこととなりましたが、構想自体の細かい事業内容よりもその背景と目的、そして効果について、今後十分にわかりやすく区民に発信をしていただくことを心よりお願いを申し上げます。
池袋周辺が現状のままであった場合の問題点や、この構想の実現が区民生活に与える影響について、具体的に説明をすることにより大きな効果が期待できると考えるものです。同時に、こうした都市再生を前にして、放置自転車についても、現在、各駅ごとに鉄道事業者や道路管理者などの協力による整備が進められておりますが、関係機関との協議・調整には時間を要しても放置自転車激減に向けて、引き続きの努力を望むところです。
また、住宅対策については、低所得者や高齢者に対する入居相談事業を一層充実させるとともに、子育て家族への入居支援についても、今後の財政状況も考慮しながら家賃補助の可能性についても検討されるよう望みます。
さらに、今回お尋ねした橋梁の整備事業のように、区民生活の根源に関わる事業について、今後多額の交付金、補助金が必要とされることや、その財源が区民生活にどのように影響しているかについて、明確に、正しく情報を発信するべきであると考えます。
次に、教育でありますが、昨今、学習塾に通う児童の姿をよく目にいたします。受験のための合格力を磨こうとする一方で、基礎的な学力や、それ以前の生きる力の衰退が全国的に指摘をされております。未来を担う児童・生徒の育成にとって必要なことは何であるのかを、常に明確にしていかなければならないと痛感をするものです。
幸い、本区においては学校教育に関する基本的な取組みの方向について、その明確な基本姿勢を豊島区教育ビジョンで示しており、今後も、その具体的な取組みにご期待を申し上げるところですが、本委員会で申し上げたことも含め、何点か要望をさせていただきます。
まず、いじめについては、発見や対処が遅れることが致命的な問題となってしまうことから、子どもが発信する、わずかなシグナルも見逃さない努力を重ね、ましてや保護者からの訴えには、より迅速・丁寧に対応されるよう要望いたします。そのためにも子どもと向き合う教員の時間をより多く確保する必要があると考えます。
次に、子どもの豊かな人間性を養うため、学校図書の活用の仕方と部活動の推進については、さらに研究を重ねていただきたいと思います。また、全ての学習の基礎となる国語力の低下は全国的にも指摘をされておりますが、これを重大な問題として捉え、取り組むことを要望いたします。
さらに、常々申し上げているように、現状、子どもの教育と育成に関し、親と教員だけでは十分とは言えないということであります。今、抱えている問題や悩みだけではなく、将来子どもが遭遇する失敗や挫折に対し、前向きに立ち直り、前進をしていくための教育基盤をより強固にするためには、社会の多くの大人の力を結集する必要があると考えます。もちろん家庭の教育力の向上は当然のことでありますが、本区でも行っている、地域との連携や、地域人材の活用に加え、国も示しているような外部人材活用事業や教員免許がなくても教壇に立てる、社会人による特別非常勤講師の制度などを、他自治体の例も参考にしながら、どんどん取り入れていただくことを強く要望するものです。
昨年も申し上げましたが、子どもにとっても親にとっても、驚きと刺激が新たな気づきと学びにつながっていくと考えるものです。
次に、公債費ですが、区長は本委員会において、現状のままでは平成33年まで続く土地開発公社の債務を3年で完済すると発言をされました。確かに、今年度末で125億円もの巨額な債務が財政硬直化の主要な要因になってしまうことから見れば、可能な限り早くこの残高を減少させていく必要があります。
しかしながら、既に計算済みとは思いますが、冒頭で申し上げた歳入と歳出にかかる不安要素は数多く、あくまで区民に与える影響を最重要視しながら、今後、状況把握をあやまつことなく実行に移されるようお願いを申し上げます。
次に、特別会計の介護保険事業会計においては、不正事業者に対する区当局の取組みは、大きく話題となりましたが、同時に介護保険制度における事業者への支給のあり方について、根本的に議論をする必要性も実感するものです。
いずれにせよ、現状では給付金が増大をし、保険料も負担感が増しているような状況においては、適正な給付体制が確保されるのは当然であります。ご苦労ではありますが、引き続き、監視体制の強化をお願い申し上げます。
また、高齢者の総合相談窓口として展開をされている地域包括支援センターについては、新たにサポート体制を整備し、バックアップを行うことは高く評価できますが、今後ますます増加する高齢者の需要に、さらにきめ細かな対応を図っていくよう要望いたします。また、同センターで行っている予防給付のマネージメントについては、現状、利用者が約半数であることから、利用条件の見直し等効果的なマネージメントの構築に向けて研究をされるよう望みます。
いつも申し上げているように、高齢になっても元気に過ごせる人生をまっとうしていただくため、介護保険以外の介護予防事業についても効果的な実践を期待いたします。いまだ介護予防の重要性を認識できない多くの高齢者に対し、工夫をこらした意識啓発を重ね、身近に取り組めるよう地域の協力も仰ぎながら実施するよう要望いたします。
最後に、後期高齢者医療事業については、この制度を立ち上げなければならない理由や医療給付に対する保険料の内訳など、簡単・明瞭に区民に伝えるようお願いをするところです。
他の委員からも指摘があったように、相手が高齢者であることを十分考慮し、ポイントを絞って訴えるよう要望いたします。また、同制度の開始にあたり、高齢者医療年金課を新設されたことは評価できますが、今後、高齢者を初めとする区民の理解と納得を促す努力を尽くしていただくようお願いをいたします。
こうした社会保障制度の見直しについては、実際に生活をする区民の現場に視点を置きながら、実態を正確に把握した上で給付と負担のあり方を明らかにしていくべきと考えます。
以上、款別にるる意見を申し上げましたが、こうして様々な事業を見渡し、痛感をすることは、従来の縦割り行政が徐々に横につらなっていくということです。多様な区民の需要に応えるには、一部署の知識だけでは対応しきれるものでないことは、以前より指摘をさせていただきましたが、今後、各部署の職員の幅広い対応能力の向上に期待をすることとなります。
いずれにしても、少子高齢や人口減少社会、あるいは東京富裕論や道州制等の議論に代表されるような、時代の大きな変換期にあって、いわゆるお役所仕事が通用しない時期に来ていることは確かであると考えます。
また、区民にしても、一方的に与えられるサービスから、自らつくり出すサービスのあり方について取り組む必要性に迫られていくことでありましょう。そのパイプ役として、私ども議員もこれまで以上に現場に身を置き、耐えざる研鑚を重ねていく覚悟であります。
最後となりましたが、急な資料請求にも関わらず、迅速に対応してくださった理事者の皆様方に深く感謝を申し上げ、意見開陳を終わります。
ありがとうございました。